ロー・アンド・オーダー ニューシリーズ

ロー・アンド・オーダーとは?

インタビュー

ディック・ウルフ 企画・製作総指揮

1946年ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。コピーライター、CMプロデューサーを経て、テレビ「NYPDブルー」等の大物プロデューサー、スティーヴン・ボチコのもとで「ヒル・ストリート・ブルース」の脚本に参加。プロデューサー兼ライターとして「マイアミ・バイス」の製作を務めたのち、1990年より「LAW & ORDER」をスタート。スピンオフ作品も含めてシリーズを確立させた。その他のテレビ作品には、「New York Undercover」(1994〜99)、「Deadline」(2000〜01)などがある。映画は、『マスカレード/甘い罠』(1987)、『ノーマンズ・ランド』(1987)、『青春の輝き』(1992)の脚本のほか、アメリカのロックバンド、ドアーズの軌跡を追う公式ドュメンタリー『ドアーズ まぼろしの世界』(2009)では製作を務めた。2007年にハリウッドの殿堂「ウォーク・オブ・フェーム」入りを果たしている。

ーこの番組のスタイルは、どのように生まれたのでしょうか。

製作がスタートした頃は、1時間番組の需要がまったくなかった時期でね。だからストーリーを前半と後半に分けようと思いついた。多くの題材のなかから考えたのが「LAW &ORDER(法と秩序)」だ。このタイトルは、レーガン時代を象徴している。国が保守化へと進むなか、当時のドラマは訴追側を描いていなかった。ヒーローは常に弱きを守る弁護士だったからね。だから我々は、警察と検察という同じ訴追側の立場を取り上げることにしたんだ。視聴者が犯行現場から裁判までを見られるようにね。

−独特の語り口も印象的ですが、コンセプトは。

目指したのは、娯楽番組とは対極にあるドキュメンタリー・タッチの作品だった。警察も検察も20分ほどで事件を解決できるわけではないけれど、視聴者に刑事法体系の現実を見せるために、時間経過をきちんと書きたかった。感情的なシーンを省き、事実を淡々と描いてね。意味のないシーンを入れる代わりに、随時テロップを挿入した。だから、それぞれのシーンは、物語を進めるためにある。

ー刑事や捜査官が主役となることが多い犯罪捜査ドラマにおいて、この作品の主役は"事件"になっていますね。

この作品の売りはスターよりも脚本だ。スターの不在を理由に、テレビ局に断られたこともあったけれど、大切なのは誰が出ているかではなく"演技"であり、登場人物なんだ。だからこそ、脚本に説得力があり、話が緻密でなければ失敗する。番組の内容についても、局の関係者をかなり動揺させたよ。中絶抗議の爆破、エイズ患者の自殺幇助…。我々の主張は、現代社会における諸問題の論争からは一線を画していたと思う。世界は黒と白以外に灰色もある。その"灰色"を描いているんだ。

ー舞台となるニューヨークの街は、作品にどのような効果をもたらしているのでしょうか。

もちろん、ニューヨークも主役の一人だ。代わりになる街はない。この作品で取り上げる事件のすべてがニューヨークの事件ではないが、全世界で起きる事件はニューヨークでも起こり得る。たとえばバングラデシュの事件も題材に使える。マンハッタンには難民がいるからね。外国人の事件を扱っても誰も驚かない。作品の題材がこの国から次々生まれるのは問題だが、アメリカには3億人以上もいるんだ。ネタは尽きないよ。